2011年4月19日火曜日

興味深い計算機

こんな記事がありました。

コクヨS&Tが片手で操作できる電卓 - ロボットデザイナーがデザイン - マイコミ
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/04/19/038/index.html

機能的には普通の電卓に毛の生えた程度で、価格も余り安いものではありませんが、デザインが凄い。片手で使える様にデザインされているというのです。
ロボットデザイナーの方がデザインしたのだそうですが、これこそ、インダストリアル・デザインであります。キャラクター電卓を出している様な所からは出てきません。

別に、キャラクター電卓がどうとか言うつもりは無いんですよ。ただ、キャラクターを貼り付けたらそれで終わり、というのでは「より良い製品をつくろう」という姿勢が感じられない、そう思うわけです。
CASIO製のキャラクター電子辞書が出たそうですが、これは、CASIOとしては電子辞書のハードウェアを提供しただけの話であって、販売は別の法人が行っている様です。これこそが「もの作り」なのであって、作った「もの」で勝負している、という事です。キャラクターを付けただけ、では、どうも「もの作り」という気概が感じられない。

今度の計算機ですが、こういうデザインというのが、なかなか興味深い。おそらくコクヨでは「新しい使い勝手の電卓」という企画を考え、それを外部のデザイナに依頼してデザインを提供してもらった、そんな所なのでしょう。しかし、製品としては非常に特色のあるものとなりました。それは「製品としてより良いものを」という心です。そのためには、外部のデザイナーの手を借りるなど、様々な手段を利用して、新しい製品を開発する。

この電卓が小気味よいのは、操作性にこだわったデザインらしく、時計機能もあるという所です。電卓に時計は必要なのか、というと、そこは色々な意見があるでしょう。最近では、ケイタイに電卓機能や時計まであるので、多くの人は電卓すら利用しない。コクヨはそういう状況下でも電卓を問い、時計機能まで付けた。それは、ケイタイ以外でも「常に片手に保持して使って欲しい」という心の現れなのではないか。そこに、この製品に対する思い入れが見て取れるのです。
この製品がそれほど売れるとは思いません。価格も余り安いものではありませんし。しかし、最近の電卓製品としては一部で「名機」と呼ばれるものになりそうな、そんな予感がします。

先日は、事務製品メーカーのキングジムが、ポメラを発売し、一部では好評を博しています。そして、今度はコクヨがこうした計算機を世に問うた。
過去に「電卓戦争」があり、CASIOとSharpが勝者として勝ち残りましたが、最近では電卓も簡単に作れる所から、100円ショップでも容易に入手出来ます。しかし、両者ともにそういう製品は出しておりません。それはそれで別に構わないのですが、今度は、そういう製造インフラ(中国などにあるEMS)を、コクヨなどの会社が利用して、新しい製品を開発、発売してくる。電卓のシェアを取ったから、といって、既存のメーカーは安心している場合ではないのです。
とはいっても、最近では「電卓なんてバカバカしくって、作ってられねぇよ」と思っているからなのか、だから「キャラクタァーでも貼っ付けておけばいいんじゃね」と、見た目投げやりな製品を出している、そんな事なのかもしれない。

大手メーカーは、多くの正社員を抱えて製品開発を行っている。その開発者の中には「もっと良い製品を作りたい」と思っている人もたくさんいるはずなのです。しかし、「会社の方針」として、そういうものを作る余裕がなくなってしまった。くすぶっている。それは、メーカーとして「富を生む」ために、「より良い製品を作って販売する」という目的から「持っている富を株式投資などに回してでもカネ作り」となってしまったからで、こうなると、大手メーカーには期待できない。

能力のある開発者は、こうした制約のある大手を出て、製品を開発するとかしないとならない。そうしないと、面白い製品は出てこない、そんな事なのかも知れない。また、EMSなどの存在が、そうしたものを後押しする。

これも「これからは、今までとは違ったものが売れるようになる」理由の一つであるように思います。

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