2010年9月5日日曜日

不謹慎ではありますが

先日、海上保安本部のヘリコプター「あきづる」の墜落事故の事故があり、乗員5名の方が亡くなられましたそうで、まずはお悔やみを申し上げます。
事故そのものついて、ここでは触れませんが、このヘリが引っかかってしまったという送電線について、少々簡単な計算をしてみようと思いまして、取り上げました次第です(だから、タイトルで不謹慎と申し上げたのでした)。

佐柳島と小島、この2つの島に架かる送電線についてのデータは、以下にあります。

Asahi.comより
http://www.asahi.com/national/gallery_e/view_photo.html?national-pg/0818/OSK201008180211.jpg

これによりますと、佐柳島で72.7 m の標高、小島で137.65 m の標高にある送電塔の間に送電線が垂れ下がり、送電線は最も低い所で50 m、送電塔の距離は 1179 m との事です。

既に、送電線の描く曲線は「懸垂線」であると判っているのですが、以前、ここで触れました懸垂線の例題では、線の両端が同じ高度である前提で計算していました。しかし、この問題では両端の高度は異なりますから、どうやって計算したものか、と悩んでしまったのです。
しかし、両端の高度は違っても同じ懸垂線であるには変わりないらしく、色々と調べた結果、どうやらSolvre付きの電卓ならば計算できるらしい、と判ったので、ここに記す次第です。

まず、懸垂線の式を、つぎの様にしておきます。

y = a*cosh(((x-k)/a)-1)

これは、原点からkだけ隔たった位置を極値とする懸垂線です。先程のデータから、佐柳島・送電塔での座標を (0, 72.7-50) = (0, 22.7)、小島・送電塔ので座標を (1179, 137.65 - 50) = (1179, 87.65) とします。これら2点を、上記の懸垂線の式が通過するので、つぎの方程式が得られます。

22.7 = a*cosh(((0-k)/a)-1) ... (1)
87.65 = a*cosh(((1179-k)/a)-1) ... (2)

原理としては、この2つの方程式を連立させれば、カテナリ数 a と、ずれた原点位置 k が求まるはずですが、これを解析的に解くのは、恐らく無理なんじゃないか、とヘタれた事を思いまして、電卓のSolvreの威力を借りようという魂胆です。

まずは (1) を変形します。

22.7/a = cosh(-k/a)-1 ,
cosh(-k/a) = 22.7/a + 1 ,

所が、cosh(-x) = cosh(x) なので、

cosh(k/a) = 22.7/a + 1 ,
k/a = arc-cosh(22.7/a + 1),

∴ k = a * arc-cosh(22.7/a + 1) ... (3)

この(3)式を (2)に代入します。

87.65 = a*cosh(((1179-(a* arc-cosh(22.7/a + 1)))/a)-1)

この式を電卓のSolvreで解けば、取り敢えずはカテナリ数 a が得られ、そこから原点座標のずれである k も計算できる筈です。但し、大抵の Solvre では f(x) = 0 の形式で式を与える必要があるので、少し書き換えます。

a*cosh(((1179-(a* arc-cosh(22.7/a + 1)))/a)-1) - 87.65 = 0

これでいいでしょうか。しかし、式の見やすさを優先して書いているので括弧が多くなっていますから、少し短くしましょう。例えば、HP35SのSolvreで解く場合には、EQNメモリに

A*(COSH((1179-A*ACOSH(22.7/A+1))/A)-1)-87.65=0

と入れてやればOKです。後は変数 A に適当な数を初期値として入れ(この場合には500くらいでいいんじゃないか、と思います)、SOLVE A として計算させます。
当方の計算結果は A = 3493.63821633 と出ました。これがカテナリ数で、極点の原点からの隔たり k は、

A*ACOSH(22.7/A+1)

を計算し、k = 398.044857704 を得ました。

カテナリ数が得られたので、送電線の長さも計算できます。極点にて佐柳島、小島の2方向について分割し、両方の値を合計するという手続きで良いでしょう。

佐柳島 - 極点 の長さは、a*sinh(k/a) = 398.906586922 m
小島 - 極点 の長さは、a*sinh((1179-k)/a) = 787.475270643 m
合計 = 1186.38185756 m

意外に短いのですね。

ちなみに、ここでは計算結果の桁数をいたずらに長く書きましたが、本来は有効桁数もありますから、この場合には小数点以下2桁程度で充分です。また、HP35Sでは表示桁数によってSolvreの計算を打ち切る状態が違ってきます。ですから、同じ事を試しても別の結果になります。御注意。

0 件のコメント: